(写真提供:Photo AC)

大石静さんが脚本を手掛け、『源氏物語』の作者・紫式部(演:吉高由里子さん)の生涯を描くNHK大河ドラマ『光る君へ』(総合、日曜午後8時ほか)。いよいよ2024年1月7日から放送が始まりました。しかし「藤原の名前多すぎ!」などと、さっそくネット上にはその複雑な人間関係についての感想があがっているようです。そこで日本史学者の榎村寛之さんに「一条期の四納言」を取り巻く事情について整理してもらいました。

藤原の4人「F4」登場

『光る君へ』第4話に、藤原公任(きんとう。演:町田啓太さん)、斉信(ただのぶ。演:金田哲さん)、行成(ゆきなり。演:渡辺大知さん)が登場した。

道長(演:柄本佑さん)と併せて、藤原の4人で「F4」などとネットでは話題になっているが、いずれも道長と同世代の貴族だ。

公任と斉信が道長と一緒にいたときに、公任だけが黒の袍(ほう)の衣冠(いかん)、道長と斉信が緋の袍の衣冠なので、公任は四位、道長たちが五位と設定されていると考えられ、寛和(かんな)元年(985)年頃、まだ20歳頃としての登場である。

ちなみに、奈良時代以来、貴族の出勤装束は束帯(そくたい)と呼ばれる、石帯(貴石で装飾された革帯)を付けるドレスアップした衣装である。他のパーツは時代によって違いが大きいが、この時代には下襲(したがさね)を後ろに長く引っ張る、白い尻尾のような裾(きょ)もそろそろ付けていたかとも思われる。

だとすれば非常に動きにくい衣装で、特別な礼装となり、着付けるのも大変である。そのため、宿直など普段の出勤時には、石帯をつけず裾も引きずらない、衣冠と呼ばれる装束が普通になる。彼らが着していたのはこれ、つまり衣の色で官位を表し、冠で官人であることを表した略装だと考えていただければいい。