ユニークなエピソードの多いつかこうへいは風間さんよりたった一つ年上なだけなのに、態度が大きかった。これが第3の転機となるのか。
――初めてつかこうへいという人に出会ったのは、早稲田の「劇団 暫(しばらく)」がつかさんの『出発』という芝居をやるので出ないか、って誘われて行ってみた時です。
つかさんは、演出はやってないのに稽古場にフラッとやって来て、「お前の芝居には垢がついてるから、しばらく俺のところに草鞋を預けてその垢を落としていけ」って僕に言ったきり、1年以上放っておかれました。
初めてつかさんの作・演出で紀伊國屋ホールの舞台に立ったのは、77年の『戦争で死ねなかったお父さんのために』です。
とにかく人を見抜く人でしたね。出会った時すでに僕は結婚してたけど、寡目な好青年というイメージで見られがちだった。
そしたら、「お前よ、そんな好青年面してるけど、家帰ってよ、酒飲んでテーブル引っくり返したりもするだろ? お前の正義感や甘い幼児性もいいよ。でも、その卑屈なところや狂気じみたところとか、全部芝居に出さなきゃダメだ。一色になるな」って。つまり、つかさんの芝居の人物は振り幅が大きくて、激しいんですよ。