背景と一体化してしまう忍者

NHKの「プロフェッショナル」を観た。
監督は自分が出ているものを観ないので1人の時にした。

今日から取材が入るんだ、という話を聞いてから
もうずいぶん経つので取材が入っていることを私はほとんど忘れていた。
監督からもその後の報告や今日NHKの人がね、みたいな話がなかったせいもある。
打ち入り(映画制作に入るときの集会)などでカメラを見かけると
思い出すのだが、またすぐに忘れてしまう。

密着取材をするスタッフというのはとても上手に自分たちの気配を消す。
それも現場で訓練されていって身についたものなのだろうけど
黒子(くろこ)というより背景と一体化してしまう忍者である。

「見ている人」がいることで人間は意識し、言動が変わったりするので
それをいかに取り払うかがドキュメンタリー制作のコツのひとつでもある。
それでいて時にはタイミングよく質問を入れてコメントを引き出す。

『還暦不行届』(著:安野モヨコ/祥伝社)

テレビカメラが入ってるのにこんなケンカとかよくできるなー
と、大家族ものなど見ていると思っていたけど
あれは「そこにいるけどいない人」が撮影しているのだと自分が
密着取材された時に知った。

カメラがあると最初こそ意識して余計なことを言わないように気をつけているが
そのうち慣れる。
カメラマンさんもディレクターさんもこちらが何かを言ったりやったりする時
笑ったり「へえ、そういうこと言うんだ」みたいな反応を一切見せないので
その存在を感知できなくなっていくのだ。

私などはカメラの存在をすぐに忘れていつものように雑な行動をして
言わなくていいことを言ってるのも全て撮影されていた。