もともと善玉も悪玉もない

いわゆる<悪玉>と言われるのが「LDLコレステロール」ですが、これに関しても「本当は悪玉なんかじゃない」と示すデータがあります。

図8は、「悪玉コレステロール値と血管系の病気による死亡率の関係」を調べたものです。
総死亡率も、脳血管系の病気も、悪玉コレステロールが高いほど低くなっていることがわかります。

「コレステロールは下げるな」本文より

唯一、冠動脈疾患だけは悪玉コレステロールの増加とともに、死亡率が増えています。冠動脈疾患とは心臓につながる太い冠動脈への血流が遮断される病気で、心筋梗塞や狭心症はその一つです。

この結果を見て、 「悪玉コレステロールが高いと心筋梗塞を起こすんだ。やっぱり悪玉では?」と思った方も多いでしょう。
とても鋭い指摘です。

しかし、日本人は、心筋梗塞より脳卒中で死ぬ人のほうが多かったはずです。
さらに今では、がんで死ぬ人のほうが圧倒的に多いわけです。

「心筋梗塞で死にたくない」という人にとって、コレステロールは確かに<悪玉>ですが、それ以外の人にとっては、むしろ<善玉>という気さえしてきます。

<悪玉>というネーミングから「すべての病気を引き起こす元凶」と思われがちですが、実態はそんなことはないのです。

※本稿は『コレステロールは下げるな』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。


コレステロールは下げるな』(著:和田秀樹/幻冬舎)

・コレステロールが十分にあると血管が丈夫になる!
・コレステロールを下げるとがんやうつになりやすい!
・悪玉コレステロールは〝悪者〟じゃない!

コレステロール値を下げないと、動脈硬化、脳卒中を招くと医者に脅かされる患者も多いが、正常値まで下げることで本当に健康になれるのだろうか? 本書ではコレステロール値は高めのほうが、元気で長生きし、健康寿命も伸びるという驚きのデータが明らかにされる。人生中盤から楽しく健やかに生きるために必読の一冊。