足利義政が書いた看板の文字を復元し、店頭に掲げている

そう思っていた矢先に、なんと銀座の松屋さんから声をかけていただいたんですよ。「リニューアルするにあたって、ぜひ出店していただけませんか」と何人もの方が見えて、頭を下げてくださった。本店からも近い銀座なら場所もいい。「出させていただきます」と、すぐにお返事しました。

ところが、会社に持ち帰ったら……営業も工場も、みんなが揃って猛反対。ブライダルの引き菓子事業はうまくいっていましたしね。「何種類ものお菓子を一個二個売るような面倒くさい商売を、うちがやる必要がどこにあるのか」と。

こんなに反対されると思わなかったので、それは誤算だった。でもやらなきゃいけないのは確かだったから、反対は全部押し切っちゃった。

とはいえ、文字通りの孤軍奮闘。オープンまでの日々は本当に大変でしたよ。お店で使う包装紙のデザインやパッケージ、パンフレットに始まって、品揃えをも含めた売り場作りまで、すべて自分でやることになってしまって。

デザインなんて、もちろん初めての経験よ。でも私、そういう作業が案外好きだったみたいで、大変さを楽しんでもいました。(笑)

オープン後はほかのデパートからもお話が次々に来て、松屋だけというわけにもいかず、お店は増えていきました。結果的には小売りが伸びて、引き菓子の売り上げを抜き、現在の塩瀬の屋台骨になっています。