東京大学資料編纂所・本郷和人先生が分析する上杉謙信「最大の失敗」とはーー(写真提供:Photo AC)

 

2024年上半期(1月~6月)に『婦人公論.jp』で大きな反響を得た記事から、今あらためて読み直したい1本をお届けします。(初公開日:2024年2月14日)

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2023年に放映された大河ドラマ『どうする家康』。家康は当時としてはかなりの長寿と言える75歳でこの世を去っています。「家康が一般的な戦国武将のように50歳前後で死んでいたら、日本は大きく変わっていた」と話すのが東京大学史料編纂所・本郷和人先生です。歴史学に“もしも”がないのが常識とは言え「あの時失敗していたら」「失敗していなければ」歴史が大きく変わっていたと思われる事象は多く存在するそう。その意味で「上杉謙信のある失敗」が歴史に与えた影響は絶大だったそうで――。

謙信の宿願

謙信は、自分の部下、領地、そして自分を支持する勢力に大動員令を出して軍勢を編成し、軍事行動を起こそうとしたときに、トイレで倒れて亡くなりました。

その作戦の目的は、織田信長との決戦だったと言われてきましたが、今では関東の平定が目的だったと見なされるようになっています。

謙信は関東管領の職を求め、就いていた。その彼にとって、関東を平定し、かつての秩序を回復することは宿願でしたが、ほとんど果たすことができていません。

さらに言えば北条氏という、かつての秩序にはなかった存在を討つことも彼にはできなかった。北条氏康とは和睦までしています。

つまり途中で、現実路線を取らざるを得なくなったわけで、やはり彼にとって関東を昔の姿に戻すことは荷が重かった、という気がします。