大切な人との死別をはじめとする「喪失」を体験した人の悲しみを癒やすサポートを「グリーフケア」と呼びます。関西学院大学「悲嘆と死別の研究センター」の坂口幸弘さんと赤田ちづるさんは、大学で教育や研究をするかたわら、病院や葬儀社と連携してグリーフケアの支援活動を行っています。今回は、お二人の著書『もう会えない人を思う夜に 大切な人と死別したあなたに伝えたいグリーフケア28のこと』から、死別と向き合い、再び歩き出すためのヒントを一部ご紹介します。
亡くなった父の誕生日にはケーキを食べる
亡き人の誕生日や記念日をお祝いしたり、命日を大切に過ごしてみたりするのもいいと思います。
父親を亡くした40代の女性はこう話されていました。
「亡くなった父の誕生日には、これでもかというくらいたくさんのケーキを食べるんです」
女性が幼い頃、父親は自分の誕生日なのにいつも彼女の好きなケーキを買ってきて、好きなだけ食べさせてくれていたそうです。
「お誕生日おめでとうと書かれたプレートも、私が食べていたんですよ。母がよく怒っていました。だから、父がいなくなった今も、父の誕生日には、父が私にしてくれたように過ごすことにしています。父に会いたくて、さみしくて眠れない夜もあるけれど、この日だけは父と過ごした時間を思い出して、少しおだやかな気持ちになれます」
ほほ笑みながら、思い出話を聞かせてくれました。
この女性のように、亡き人を思い浮かべながらひとりの時間を過ごすのもいいでしょう。