「つかこうへい」の面白さにどんどんはまっていった
そりゃそうだろう。書いた本人に聞いているんだから。普通の芝居なら大体の解釈、推理は出来る。しかし、この男の場合はそうはいかない。
下手に推量して進めると、とんでもないところに行ってしまう。劇的構造が違うのだ。それにしても、初日前の三日間で芝居ががらりと変わったのは大変だった。何より付け足しの台詞を澱みなく言わなくてはいけない。
私は昔から台詞覚えは割と得意な方だった。文学座の稽古始めでは必ずテーブルを囲んでの本読みが1週間くらいあり、その間に相手の台詞も覚えてしまうので、皆から呆れられていたほどだった。
だから台詞の付け足しに関しては苦にならなかったが、台詞覚えの苦手な人は大変だったようだ。私の場合それでかえって緊張感が増して楽しめた。
口立てですぐやるというのは、即興的対応が好きな私の体質に合っているのかも知れないと思った。本番は大いにウケた。
初めてアトリエ公演を観に来た父にも、「今まで見たお前の芝居の中で1番面白かった」と言われた。内心「えーこれが1番かよ」と何だか複雑な気持ちだったが、この芝居の面白さが分かるなんて親父もセンスあるじゃんと嬉しく思ったのは確かだ。
本番中、つかは毎日のように芝居を観に来た。そして、終演後は必ず飲みに行って、色んな話をしているうちに、私はこの逆説を多用する二つ年下の男の面白さにどんどんはまっていった。
※本稿は『未完成』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。
『未完成』(著:西岡徳馬/幻冬舎)
「まだ、足りねえ……!」
人生は演じることの繰り返し。喜びも悲しみも、演技こそが己の魂を呼び覚ます。
懸命に生きる全ての人へ、お祭り騒ぎの初自伝!!
新境地を開いた「幕末純情伝」、一世風靡した「東京ラブストーリー」。そして2024年、エミー賞最多部門賞受賞「SHOGUN 将軍」。高倉健、勝慎太郎、つかこうへい、蜷川幸雄、杉村春子といった英傑たちの等身大の生き様。
人生78年。役者歴半世紀以上。
無尽蔵のエネルギーでいつの時代も新しく、発展途上で生きる。
彼の勢いを止めることなんて誰にもできない!