ひと月に1度、私が2人くらい入れそうな大きな段ボール箱がわが家に届きます。中身は母が使うオムツ。今は母がオムツをする現実も受け入れられるようになった私ですが、山と積まれたオムツの中にいると、やっぱり複雑な気持ちになりますね。
お風呂に入れるのもずっと私の役目。母がほかの方をイヤがるからです。オムツ替えや入浴のときに母の体を傷つけないよう、あるとき、ずっときれいにネイルをしていた爪を短く切りました。人前でマイクを握る仕事をする私にとって、ネイルは戦闘態勢に入るスイッチのようなもの。寂しい気持ちになったものです。
すると化粧も面倒になり、美容院に行くのも間遠になって。鏡で自分の顔を見たらもうびっくり、うんざり。そんな私に、母は自分の白髪が目立つようになると、頭を指差し、「染めて」とアピールします。母は、お洋服も自分が気に入らないものは着ません。そして、これまでのようにデパートに行けなくなった代わりに、通販のカタログを眺めて、ほしいお洋服のページを折っていたりするのです。それも、うんと高い商品に(笑)。
98歳でも、認知症でも、きれいにしていたいというその精神は見習わなくては、と思うようになりました。介護する側も、自分を奮い立たせる意味でも、たまには「病院より美容院」ね。(笑)
いろいろな方の力を借り、仕事も続けられて、毎日こうしてニコニコしていられるようになりました。介護との関わり方は人それぞれですが、私の場合、引き揚げのときからずっと守り続けてくれた母を、今度は私が守りたい。状態には波がありますが、1日でも長く幸せに暮らしてもらい、最後を看取るのが私のミッションだと思っています。