そんなに緊密な関係になるわけじゃない

フォスターペアレントとフォスターチャイルドは、施策上、そんなに緊密な関係になるわけじゃない。支援や手紙は、すべて協会を通じてやりとりされ、彼の名前や家族構成以外の個人情報を、私たちが入手することはない。彼が無事に高校を卒業し、バナナ農家の父親を手伝うようになったという協会からの報告と、本人自筆の感謝の手紙を受け取り、それを祝福するカードを送ったのを最後に、私たちはフォスターペアレントを卒業した。

そんな淡い関係でも、縁はやっぱり存在する。世界中に貧困地帯があるのに、私たちが結婚したその日に生まれた、新婚旅行で行ったリゾートの向かいの島の男の子が選ばれてくるなんて、確率論からすれば、奇跡にあたろう。

(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)

そういえば、そのリゾートのホテルの浜に、8歳くらいにしか見えない少年が、4歳ほどの弟を連れてバナナを売りに来ていた。小舟を操って、銃を抱えた警備員の監視をかいくぐり、たくましく交渉して、バナナを売って帰った。

私は彼をかわいそうだとは思わなかった。家族を支える責任感と自信で輝いていたからだ。けれど、過酷な人生だなぁとは思った。私の脳の中にある、そんなイメージが、数年後、何らかのかたちでフィリピンのバナナ農園の少年への道を開いたのだと、私は思っている。