筋肉が衰えたと感じる(写真はイメージ/写真提供:Photo AC)

少ない運動量で大きな効果を得る「スロトレ」開発者で、自らもボディビルダーとして活躍した元東大名誉教授の石井直方さん。2024年2月に逝去されてからも、「難しいことを簡単に」まとめられている著作からは多くの学びがあります。そこで、健康寿命を延ばすために重要な「筋力」や、シニアに適した筋トレ方法を解説した『シニアのための筋トレ学 「生活筋力」の土台をつくる方法』より、一部を抜粋して紹介します。

筋力が衰えたと実感するサイン

最近、からだが衰えたなと実感するサインは、人によってさまざまでしょう。

例えば、椅子から立ち上がるときに手を使う、階段では手すりを使わないと不安、エスカレーターに足を乗せるタイミングがつかめない、ちょっと走っただけで息切れする、運動会で全力で走ったら足がもつれて転んでしまった……など。

こういった体験が、運動をしなければならないという自覚を促すきっかけとなることも多いのではないかと思います。

しかし、実はこのような自覚症状(サイン)が表れてからでは遅いのです。なぜなら、日常生活のうえでは、まったく困らないほどの筋力がそもそもとして備わっているのがヒトのからだの基本であるはずだから。

いい換えれば、私たちの生活筋力には余力があるからこそ、仮になにか予期せぬ非常事態が生じたとしても、そういった危険を無難に回避できるというわけです。

したがって、日常生活に支障をきたすようなサインが出てきたということは、残念ながらその人の筋力はすでに相当に落ちているという証しでもあるのです。