下半身の筋力をつける(写真はイメージ/写真提供:Photo AC)

少ない運動量で大きな効果を得る「スロトレ」開発者で、自らもボディビルダーとして活躍した元東大名誉教授の石井直方さん。2024年2月に逝去されてからも、「難しいことを簡単に」まとめられている著作からは多くの学びがあります。そこで、健康寿命を延ばすために重要な「筋力」や、シニアに適した筋トレ方法を解説した『シニアのための筋トレ学 「生活筋力」の土台をつくる方法』より、一部を抜粋して紹介します。

知らず知らずのうちに衰えている脚筋力

生活筋力の向上のための筋トレは、たとえ高齢となっても日常生活を元気に、そして幸せに送れることを最大の目的としています。

そのためには、筋肉および筋力の正常な働きや機能の維持・向上がより重要な時代になってきていることを象徴する、最適かつ最も有効な手段であるといえるでしょう。

ところで、筋力は実際に何歳くらいから衰え始めるのでしょうか。実は、下半身(下肢:脚)は30歳過ぎから少しずつ衰え始めるといわれています。

ただし、日常生活に支障があっては困ってしまうので、下半身にはそもそもとして強靭な筋力が備わっています。すなわちもともと十分すぎるほどの余力がある。

したがって、少しずつ衰え続けてはいるけれども、蓄えがあるぶん落ちても気がつかないのです。おそらく、40歳くらいまでは気づかないという人がほとんどではないでしょうか。

そして、40代半ばくらいになって、子どもの運動会で全力で走ったら足がもつれて転んでしまった、と。例えば、そういった苦い経験をしてはじめて、はたと脚筋力の衰えに気づくという人が少なくない。

つまり、40歳過ぎになってようやく、自覚できるレベルにまで筋力が低下していることにショックを覚えるというわけです。