大切な人やものを失ったとき、人は喪失感を抱くものです。高齢者専門の精神科医として、多くの患者やその家族と向き合ってきた和田秀樹先生は、「喪失は誰もが避けては通れないものであり、喪失感を抱く状況は、人生が長くなればなるだけ増えるもの」と語ります。そこで今回は、和田先生の著書『喪失感の壁-きもち次第で何があっても大丈夫』から抜粋し、実際の相談事例とともに、さまざまな喪失感とどう向き合い、どう乗り越えていくかの具体的なヒントをご紹介します。
断捨離で処分したコレクションに未練
住み替えにともない、以前よりも狭いマンションに引っ越すことになりました。
その際、長年にわたり集めてきたアナログのLPレコードと、数十年分の音楽雑誌のコレクションを手放しました。いわゆる「断捨離」です。
こつこつと集めて大切にしてきたコレクションですから、10年前なら手放すなど考えませんでした。けれど、レコードはほぼ棚のデッドスペースにしまい込んでいましたし、音楽雑誌に関しては老眼で小さな文字が読めなくなっていました。物理的な収納の問題だけでなく、これからの人生を少し身軽に生きていくべきではないか、という思いもあり、断腸の思いで大量に処分しました。
専門業者に引き取ってもらったので、それなりの金額にはなりましたし、「スッキリした」と感じた部分もあります。
ところが最近になって、処分したことへの後悔がじわじわと湧いてきてしまって……。「どうせ使わないんだから」「誰かの役に立てば」と自分に言い聞かせたのに、やっぱり思いは断ち切れません。このような過去の自分の決断と、どう向き合っていけばいいのでしょうか。 (60代後半・男性)