対応に慣れている職員の勧めで受診を了解した母親

・地域包括支援センターの対応:相談者(娘)の話を聞いて、まずセンター職員が母親の自宅を訪ねて様子を確認したいと提案したところ、「親に自分が相談したことを知られたくない」という希望がありました。

そこで職員は、管轄地域の高齢者宅を訪問しているふうを装って母親宅を訪問しました。そこで母親の日常生活のことや不安に思うことなどについて聞き取りをし、ちょうど「ものわすれ予防検診(※)」があるから受けてみないかと勧めました。

母親は娘さんから物忘れを指摘されると強く反発していたようですが、職員の勧めで案外すんなりと受診することを了解し、予防検診を受けたあとに介護保険申請も行いました。

要介護認定の判定が出るまでの間は職員が見守りのために定期的に電話や訪問をし、1カ月ほどして要介護2の判定が出たところで介護保険サービスの利用を開始しました。

現在母親は地域密着型サービスの一つである小規模多機能型居宅介護を利用し、通所や宿泊サービスを導入しながら、一人で穏やかな在宅生活を送っています。今年で初回の相談から2年が過ぎましたが、今でもセンター職員が電話・訪問による見守りを継続しているケースです。

(※ものわすれ予防検診……久留米市では、久留米大学高次脳疾患研究所との共同事業として「ものわすれ予防検診」を実施している[令和5年度実績]。対象は市内の65歳以上の人。1:血圧・体組成測定、2:認知機能検査、3:脳血流検査、4:絵画検査、5:嗅覚・聴覚検査により、認知機能の状態を確認する)

・コメント:認知症の人は、家族が受診を勧めると「自分は病気ではない」と主張して受診を拒否することがよくあります。ですが「本人も何かおかしい」という自覚や不安はあり、家族以外の第三者が受診や検査を提案すると、思いのほかスムーズに医療につながることがあります。

認知症で生活に支障が出てきているのに家族が病院に連れていくのが難しいというときは、地域包括支援センターに相談してもらえれば何かお役に立てると思います。

 

※本稿は『親の介護を考え始めたら読む本』(幻冬舎)の一部を再編集したものです。

 

 

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親の介護を考え始めたら読む本』(著:柴田元/幻冬舎)

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