大量のカレーで命をつなぐ
一人になってからも「遊び」を止められず、親の遺産を取り崩し続けた。そしてついに遺産が0円になる。悪いことは重なるもので、「会社の業績が悪くてもう雇えない」とパートもクビになってしまったのだ。
今は食費を切り詰めるため、大量のカレーを作り、それを冷凍して少しずつ食べている。固定資産税は滞納中。出歩くことも少なく、テレビを見て過ごす毎日。
求人サイトで見かける介護求人は、気にはなっている。
「親の介護経験もあるし、実はホームヘルパー2級(訪問介護員2級養成研修課程)の資格も取得しているんです。でも、体力的にも肉体労働は難しいですし、やっぱり知的労働がしたい。自分はIT系の会社が長かったので、パソコンを教えたりする仕事ができたらいいのですが。でも家に一人でいると、なんとなくこのままでもいいかと思ってしまいます」
ホワイトカラーの男性は、ケア労働に対して心理的ハードルを感じる人も多い。健康に不安があるなら尚更だ。
※本稿は、『ルポ 過労シニア 「高齢労働者」はなぜ激増したのか』(朝日新聞出版)の一部を再編集したものです。
『ルポ 過労シニア 「高齢労働者」はなぜ激増したのか』(著:若月澪子/朝日新聞出版)
『副業おじさん』で話題を呼んだ労働ジャーナリストが、21人の高齢労働者に密着取材。
やりがいと搾取の狭間で揺れる姿を通して、現代日本が抱える「見えにくい貧困」と「孤立の構造」に鋭く切り込む。
「働く高齢者」の実像に迫る、渾身のノンフィクション!




