若さの秘訣は「開放性」

おりがみの効果について解説する前に知っていただきたいのが、手指の動きは2種類に大別できるということです。一つは、ボールや鉄棒などを握る単純な動きで、「握力把握」と呼ばれています。もう一つは「精密把握」で、小さなものを箸でつまんだり、紙を折ったりするような、器用さが必要とされる動きのこと。

握力把握で活性化するのは脳の運動野だけですが、精密把握はイメージを司る運動前野、「これをやったら楽しそうだ」と認知する帯状皮質運動野をはじめ、脳のあらゆる場所に刺激を与え、活動量を増やしてくれます。

おりがみを折る動きは、まさにこの精密把握であり、脳の老化防止に役立つことが近年の研究でわかってきました。

なぜおりがみが脳活に有効なのか、具体的にお話ししましょう。一つは、紙を折る細かい動きが脳全体によい刺激を与えること。次に、紙に触れる指先に視線を向けるので、集中してものを見る習慣がつくことです。

頭の中でものの形を立体的に把握する力を「メンタルローテーション力」と呼びます。おりがみは平らな紙から立体的な作品を作る過程で、紙の形がどう変化するかを脳内で予測するので、このメンタルローテーション力が自動的に鍛えられるのです。

空間を把握する力が向上すると地図を読む力が高まって道に迷いにくくなったり、車の車庫入れが上手になったりします。

また、好奇心が強く、常に新しいことにチャレンジする「開放性」を持って行動している人は、認知機能が落ちにくいというデータも。

創作おりがみ作家で、「脳活おりがみ」本の著者である伊達博充さんは、87歳になった今も現役の建築士として働き、日々新しい創作おりがみを考案しています。

おりがみを折る指先の動きも、実に正確&スピーディで、新しい作品を生み出したいという「開放性」が、その若々しさを支えているといえるでしょう。

おりがみをもう一度やってみようと思ったら、少しずつ、オリジナル作品にも挑戦してください。既存のものからちょっと折り方を変えてみる、和紙や包装紙を使ってみるなど、ほんの少しの変化でいいのです。いつもと違う方法に挑戦することで脳神経細胞が刺激され、認知機能の低下を防いでくれます。

ストレスは認知機能の衰えを招くので根を詰めすぎずお孫さんや友人と会話しながら折るのもいいですね。何歳になっても脳の若返りは可能。おりがみで活力ある脳を取り戻しましょう。