“人手不足”の現実と誤解──配置基準を満たしても足りないと感じる理由
介護現場では「人手が足りません」という声が日常的に聞こえます。しかし統計をのぞくと、法定の人員配置基準はおおむね充足している事業所が多いのも事実です。
このギャップが生まれる背景には、配置基準の“計算上の充足”と、現場が肌で感じる“運用上の不足”という二重構造があります。
まず配置基準は、「利用者*名に対し常勤換算で職員*名」という数式等でおおよそ決まります。
ところが常勤換算には夜勤者や短時間パートも含まれ、休暇や突発休の穴埋めを考慮しません。実際には週40時間勤務の常勤が1人欠けるたびに、複数のパートが休日や夕方に飛び込んでシフトを埋めます。
帳簿上は人が足りていても、現場感覚では“余白ゼロ”で走り続けているのです。
次に、利用者の状態は数式には収まりません。同じ要介護3でもAさんはトイレ誘導が自立に近く、Bさんは全介助というケースは珍しくありません。
人員配置は平均で計算されるため、重度者が増えるほどスタッフ1人あたりのケア負担は指数関数的に跳ね上がります。「去年と同じ定員なのに仕事量は倍になった」と嘆く声は、こうした臨床のグラデーションを映しています。