現場が体感する“余力”をどう可視化・確保するか
こうした綱渡りの運用は、職員の心理に影を落とします。
「自分が休むと現場が崩れる」「ミスが起きても責任を取るのは自分」といったプレッシャーが常態化し、仕事そのものより“欠員を出さないこと”に意識が傾きます。やりがいを感じる余裕が削られ、離職を検討する動機へと変わります。
社会的には「人手不足=工数削減でカバー」と思われがちです。しかしその考え方は介護においては誤っている部分があり、多くの介護領域での事業開発が過ちを犯しています。
人手が不足しているのは市場全体であり、事業所単位では「最低限の人員は充足」している状態です。また、現実的には人にこれ以上のコストを割くことができない経営状態があります。
人手不足の課題は、今日の事業運営ではなく、「人が不足した時の充足方法が足りていないこと」にあり、今日の事業運営が逼迫していることとは必ずしも一致しません。そのことを、介護領域での事業開発を目指す人は認識する必要があります。
誤解を正すには、まず“人員=人数”の発想を改め、シフトの余白・業務量・スキルミックスを評価軸に組み込む必要があります。
たとえば、有給取得率や突発休カバー率をKPIに設定し、一定の“空席”を前提に人を配置する。あるいは看護助手や介護補助を戦略的に組み込み、資格者が専門業務に集中できる環境を整える。カレンダー上の人数合わせではなく、現場が体感する“余力”をどう可視化・確保するかが、人手不足感を緩和する第一歩になります。
※本稿は、『未来をつくる介護』(クロスメディア・パブリッシング)の一部を再編集したものです。
『未来をつくる介護』(著:森山穂貴/クロスメディア・パブリッシング)
本書ではアメリカのCCRC(生涯居住型コミュニティ)を参考に、日本の実情に合わせた独自モデルを提唱。
「課題先進国」から「解決先進国」へと転換する可能性を示します。




