『ツーリストファミリー』場面写真
(c) Million Dollar Studios (c) MRP Entertainment.
イラスト提供:さかもとさん
1989年に漫画家デビュー、その後、膠原病と闘いながら、作家・歌手・画家としても活動しているさかもと未明さんは、子どもの頃から大の映画好き。古今東西のさまざまな作品について、愛をこめて語りつくします!今回は「ツーリストファミリー」(2月6日から公開中)です。(イラスト:筆者)

笑いの中で普遍的なテーマに切り込んだ作品

「インドで異例のロングランヒット!」
「著名監督が絶賛!」「スリランカからインドに密入国した一家の物語」

気になるコピーが並ぶこの作品に私は飛びついた。「日本もいま移民についての議論があるし。ここは勉強しとかないと!」

最初はそんな気持ちで観始めた。しかし本作では、「移民」という社会問題についてシリアスに考えるより、映画自体の面白さに笑い、感動して涙してしまった。頭ではなく、ハートに来る映画なのである。移民問題に関してはかなりアバウトだというのが正直なところで。(笑)

密入国したファミリーの次男ムッリ(カマレーシュ)は、「1日1度しか食事をとれなかった」難民にはとても見えない肥えっぷりだし(笑)、ボートで海を渡ってきた難民にしては、家族そろって小ぎれいだ。

突っ込みどころは満載なのだが、リアルさを描いて陰惨になるより、笑いの中で「人間はどうやって社会に生きる場所を見出すか」という普遍的なテーマに切り込んだのが本作。

この映画を観ている途中、マーガレット・ミードという文化人類学者に関わる記事を見た。「人類の起源の証拠となる考古学的発見とは何か」と問われた博士は、「治癒した跡のある大腿骨」と答えたそうだ。動物であれば大腿骨を骨折したら、自分で獲物をとり、川辺に水を飲みに行くことができず、死ぬ。しかし、治癒した大腿骨があるということは、その人物が怪我を負った時に水や食物を運び、面倒を見た人物がいたということだ。そこには「社会」や「相互補助」の存在が証されるとミード博士は説いた。「人類」とはそもそも、「社会的存在」なのだ。