それが彼には嬉しかったんです

PTと患者の間で、このような会話があったという。

『ぼくは何をしたらいいですか。あなたの希望を聞かせてください』

『わが人生に悔いなし』(著:瀬戸内みなみ/飛鳥新社)

『この山荘は、地下に温泉を引いている。地下まで歩いて行って、自慢の温泉に入ってから死にたい』

彼が寝ているベッドは2階。東京の病院で寝たきりになって、歩けなくなっていた。PTはこう答えた。

『わかりました、訓練して必ず歩けるようにします。でも今日、ぼくはあなたを背負っていきますよ。まず温泉に入っちゃいましょう』

そして本当に彼を地下の温泉に連れて行って、一緒に風呂に入った。

「それが彼には嬉しかったんです」