戦国時代の「複雑さ」を見えなくする危うさ

もちろん、義昭が何もしなかったと言いたいのではありません。

官僚組織がない、直轄軍がない、そうした苛酷な制約の下で、義昭は将軍として、反信長勢力を結びつけようと努力しました。

しかし、それをもって、「義昭を中心とする巨大な統一同盟」が存在したと考えるのは、やや単純化が過ぎるのではないか。

むしろ実際の戦国政治は、それぞれの大名の個別事情、すなわち地域戦略、利害対立、一時的連携、日和見、裏切り等々の連続だったはずです。

私は、「信長包囲網」という言葉は便利ではあるけれども、その便利さゆえに、かえって戦国時代の複雑さを見えなくしてしまう危険があると思っています。

少なくとも、「義昭が御内書を書いた」ことと、「全国規模の反信長統一戦線が実在した」ことは、同じではない。

このことは中世という社会、強力な統一権力が存在しなかった社会をどう見るか、という歴史研究者の「大局観」にもろに関わってきます。

ですからフィクションならばまったく構いませんが、歴史研究に従事する人が言及する場合は、慎重に考える必要がある、と指摘したいのです。

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