「富田林の白鳥酒造の白鳥と申します。はじめてお目に掛かります。麻子さんには朗読劇で……」
「なにが朗読劇だ。なんの役にも立たん劇に出たくらいで偉そうな顔をするな。そんなものはただの遊びだ。生まれたときから迷惑ばかり掛けやがって。これまでのことが申し訳ないと思うのなら、さっさと仕事を決めて働け」
送迎車の運転手と介護士は老人の暴言には慣れているのか顔色一つ変えず、車椅子をリフトに乗せようとした。無視されたと思った父は唾を飛ばして怒鳴った。
「誰の金で生きてこられたと思っているんだ。この出来損ないが」
それを聞くと、麻子はわっと泣き出して家に駆け込んだ。私は全身の血が怒りで沸騰するかのように感じた。今にも父に飛びかかりそうになるのを懸命にこらえた。
霧は私を抑え、父に落ち着いて話しかけた。
「朗読劇には私がお願いして参加してもらいました。麻子さんはとても才能があって……」
「白鳥と言ったか。あんたもあんただ。素人劇のようなくだらん道楽に、うちの女どもを引き込むのはやめてもらおうか。物知らずの連中だから甘く見ているのだろう? 女子供につけ込んでなにがしたい? 金か?」
父の暴言の矛先が霧に向かった。
