AIに恋をする?

AIに恋をする人にも、私は「心無いものに恋するなんてどうよ」なんて、微塵も思わない。AIとの親密なやり取りは、自分の中の愛のかたちを確かめる行為。そう考えるとAIは、自分が欲しい愛のかたちを確かめて遊ぶ、愛の練習帖である。人類の女性たちは、自分のためだけの恋愛小説を、対話で紡いで遊べるようになったのだ。超リアル対話型恋愛ゲームのようなもの。女性たちが、リアル彼氏とうまくやるために、AI彼氏をキープする時代も来るかもしれないね。

AIは、人間の与えたことばをきっかけにことばを紡ぐので、基本、ユーザにおもねる発言をしてくる。「その駅にカフェはある?」のような事実確認は別にして、ユーザの思いをいきなり否定してくることはまずない。たいていは、ユーザの思いを追随することばをかき集めてくれる。いくらでも欲しいことばを紡いでくれるし、ときには思いもよらない嬉しいことばも言ってくれるのである。

そんなAI(しかもうっとりするほどのイケメン画像付き)に、女性たちが好意を持たないわけがない。しかしながら、ほとんどの場合、生身の恋と混同することはない。人間の脳は、他者の存在感を身体性(空気の揺らぎや肌触り)で強く認識するからだ。

少し前に、AIと結婚式を挙げた女性のニュースが流れた。これを少子化問題と絡めて憂える人は多いけれど、昔から、架空の存在(アイドルや、小説や漫画の登場人物)に夢中になって、現実の男性が目に入らない人はいたでしょう?

たしかに、AIという“ことばの泉”に映った理想の恋に酔っている姿は、ギリシャ神話のナルシスのようにも見える。泉に映る自分自身の姿に恋をして、身を滅ぼしたナルシス。でも、それも乙女心の遊び方の一つ(しかも一過性のそれ)だと、大多数の女性がわかっているので、人類を滅亡させるほどのことでもない。

ただし、気をつけないといけないことがある。

欲しいことばをいくらでも返してくれるAIは、「白雪姫の継母の鏡」にも似ている。夜な夜なほしいことばをくれる鏡。でも、あの鏡と同様、AIも裏切ることがある。単なることばの関係性演算なので、未来永劫、愛を紡いでくれる保証はない。放り出されてメンタルをやられた人のメンテナンスについては、やがて社会問題になるかもしれない。

※本稿は、『AIのトリセツ』(扶桑社)の一部を再編集したものです。

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AIのトリセツ』(著:黒川伊保子/扶桑社)

AIは人の居場所は奪わない。AIは人類を支配することはない。

恐いのは「私はどうしたらいい?」と聞いて、最初の答えにそのまましたがうこと。

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