ブランケット症候群
子どもの頃に使っていた毛布など、馴染みのある柔らかい布状のものに触れていると精神が落ち着く《ブランケット症候群》と似ているが、違いがあるとすれば、生物をかたどったぬいぐるみには自分たちが必要とする慮りや励ましの役割を託しやすい。
想像力さえ駆使すれば、ぬいぐるみはたちまち魂を宿して自分の理解者となり、実生活では誰も与えてくれない優しさで自分を包んでくれる。
私の妹の部屋は、とある人気キャラクターのぬいぐるみとグッズで溢れている。中年のおばさんがこんな趣味ってどうなのよ、と呆れて意見をしたこともあったが、ある日妹から、そのキャラクターを生んだ会社の創設者が、仕事で疲れて帰宅したときに、花瓶にあった一輪の花を見て、その可愛らしさに心の底から癒やされたのが全てのきっかけだったという話を聞き、考えが改まった。
確かに、周りには打ち明けられない、妹の胸の奥に潜む寂しさや疲労感を受け止め続けてきたぬいぐるみたちを、私の価値観で捨てなさいなどと言えた筋合いはない。
私こそ、この数週間パンチくんの映像をひたすら追い続けてしまったのは、自分の中に彼と同じ心理が働いていたからなのだろう。
『歩きながら考える』(著:ヤマザキマリ/中公新書ラクレ)
パンデミック下、日本に長期滞在することになった「旅する漫画家」ヤマザキマリ。思いがけなく移動の自由を奪われた日々の中で思索を重ね、様々な気づきや発見があった。「日本らしさ」とは何か? 倫理の異なる集団同士の争いを回避するためには? そして私たちは、この先行き不透明な世界をどう生きていけば良いのか? 自分の頭で考えるための知恵とユーモアがつまった1冊。たちどまったままではいられない。新たな歩みを始めよう!






