口臭というものは、自分では気づきにくい。よほどニンニクをたっぷり食べたときは自分でも身体中からニンニク臭を発している気配は察するが、どれほど強烈な悪臭を周囲に振りまいているかはわからない。
これも昔々。エチオピアを初めて訪れたとき、現地でお世話になるエチオピア人と会って挨拶をすると、すらりと背の高いその男性は、英語で丁寧に、
「ナイス・ツー・ミート・ユー」
そう言ってこちらの名刺を受け取り、軽く頭を下げ、それから素早く息を深く吸い込んだ。その後、お喋りをするときも、自分が発言したあと即座に息を吸い込む。
エチオピアは標高が高い。空気が薄いので、急に走ったりプールに飛び込んだりしないようにと事前に注意を受けていた。
そうか、空気が薄いから、会話をするだけで呼吸が苦しくなるせいかしら。勝手に思い込んでいたら、エチオピアに住む日本人に訂正された。
「違います。エチオピア人はとても礼儀正しい国民です。相手に自分の息を吹きかけないよう、喋ったあとは息を吸い込む習慣がついているのです」
ステキな心がけだなあと感服したのを思い出した。
今日は収録中、なるべく息を吸い込むようにしてみるか。自分のニンニク臭は自分で回収する。吐いたら即、吸う。できるかしら。
そういえば、これも昔々。アメリカに住んでいたときに聞いた話。オフィスの棚から悪臭が漂ってきた。なんだろうと思って調査したところ、長らく放置していた段ボール箱の中で何かが腐っていることが判明。日本人スタッフがその箱を処分しようとしたら、アメリカ人スタッフは、その箱の上にオーデコロンをたっぷり吹きつけたという。
「日本人は悪臭を元から取り除こうと考えるけれど、アメリカ人は悪臭の上にいい香りを振りかけて臭さを消そうとするの」
これも現地に住んでいる日本人の意見であった。真偽のほどはわからないけれど、日本人の消臭好きはたしかかもしれない。でも日本人も外国人には「味噌醤油クサい国民」と思われているそうですからね。
自分の「クサい」はわからない。
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