あなたのこと一生忘れない
信号を渡り切るとバス停までもう少し。
「あのバス停ですよ!」
「やっぱり車で行くわ。また迷っても困るから」
「じゃあタクシーひろいますね」
すぐに来たタクシーに手を挙げる。運転手さんに行き先を伝えると、住所がわかれば教えてほしいと言われ、Google 先生に書いてある住所を読み上げた。
その間何度も何度も、
「ありがとうね本当にありがとう」
とご老人は呟いた。
「じゃあここで失礼します」
そう伝えると、
「あなたのこと一生忘れない」と手を合わせながら言ってくれた。
スライドドアが閉まった。タクシーが見えなくなるまで見送った。
最後の表情が、姿が、いつまでも頭に残っている。
上京してから馴染みの街になった渋谷。1人で、友人と、幾度となく訪れているけれど、こんな気持ちをもらったのは初めてだった。