(写真:『今日も、自分を生きる練習』より)
映画『蝉しぐれ』(「蝉」は正しくは旧字)でスクリーンデビュー以来、20年にわたり数々の作品で印象的な役を演じてきた俳優・佐津川愛美さん。2025年には『映画と仲間filty』を設立し、映画の現場の魅力をより多くの人に届ける活動にも取り組んでいます。そこで今回は佐津川さんの初エッセイ『今日も、自分を生きる練習』より一部を抜粋し、佐津川さんが「自分自身の輪郭を見つめ直した軌跡」をお届けします。

2年間のホテル暮らし

思い立って、しばらくホテル暮らしをしていた。引っ越しをしなければと、急遽思うことがあり、本来は部屋のこだわりが強い人間だけれど、今回は妥協も仕方がないと思っていた。

まぁ、このあたりかなぁという物件をすぐに探し出し、場所だけ見に行った。うん、まぁ、すぐに出なくちゃだから、引っ越し先があるだけ有り難い。ここの物件を明日、不動産屋さんに問い合わせてみようと決めた。

その帰り道の電車でスマホを開くと、「ホテルのサブスク」という広告が出てきた。コロナ禍によりホテルは値段が下がっていた。読み進めると、メリットが沢山。決済が済めば審査もなく、今日からでも借りられる。色んな街に住める。

コロナで旅に出られないストレスもあったし、1年くらいはいいかもしれない。その中で、ゆっくり次の家を探せばいい。いつかホテル暮らしをしたいという夢もあったけれど、こんな現実的な値段で住めるとは思っていなかった。ワクワクした。ワクワクしたときはGOサイン。私は憧れのホテル暮らしをすぐさまスタートさせた。