運動療法を実践するにあたっての大前提と注意点

運動療法に取り組む前に、いくつか大前提になることをお伝えしなければなりません。

手指疾患とひと口にいっても症状は千差万別で、そのメカニズムも多岐にわたりますが、症状の発症や悪化の原因を紐解いていくと、おおむね「浮腫・腫脹」と「関節拘縮」に行き着きます。

『自力でできるヘバーデン結節のリセット法』(著:三戸一晃/アスコム)

浮腫・腫脹は「むくみ」、関節拘縮は「こわばり」に置き換えるとわかりやすいでしょう。

そして、むくむから硬くなる。硬くなるからむくむ。むくむから硬くなる。そして、硬くなるからむくむ。

きわめておおざっぱではありますが、この悪循環によって、症状はどんどん悪くなっていきます。

手術をせず、みなさんご自身の力で、この“負のスパイラル”を断ち切ることを目指すのが、運動療法なのです。

<『自力でできるヘバーデン結節のリセット法』より>

また、運動療法は手指疾患を治療するための主力の方法ではなく、あくまで現時点では補助的な保存療法(場合によっては薬や手術とともに病気や怪我の緩和や症状の改善を目指す治療法)であるということを、しっかり認識しておきましょう。

「やれば短期間で、なおかつ劇的に症状がよくなる」ことを可能にする、まるで魔法のような方法ではないことをご承知おきください。

手指になんらかの違和感を覚えたら、始めはいかなる状況であっても原因を考え、必要に応じて手を休ませることを優先させましょう。

とくに、強い痛みがある場合は、ある程度症状が落ち着くまで待つのが鉄則です。

運動療法は、おこなったその日から目に見える効果が表れるものではないので、まずは最低でも2週間、粘り強く、コツコツと続けていきましょう。

症状が徐々によくなっている実感が持てたら、そのまま継続してください。

1か月半ほど継続してもあまり効果を感じられなかったり、逆に痛みやしびれが増してしまったりしたら、専門の医療機関を受診することをおすすめします。

早く効果を得たいからということで、強度を上げたり、回数や時間を増やしたりしても、それに比例して効果がアップするものではありません。ご自身の判断で無理に取り組み、症状が悪化してしまっては、元も子もないですからね。

ただし、個人によって適した量が異なることがあります。微調整程度であれば、適宜秒数や回数を前後させても構いません。

運動療法をやった次の日に痛みが増したと感じたら、回数を減らすなどして量を軽減したほうがいいでしょう。

というように、冒頭からみなさんの不安をあおるような注意点を多く挙げてきましたが、それはひとえに、誤った方法で取り組んでほしくないからです。

セルフメディケーションは大事ではあるものの、「我流」や「素人の生兵法」は本当に危険です。失敗の原因になるので、専門家の指示にしっかり従ってください。

注意点をきちんと守り、定められた基準やルールに則って実践すれば、運動療法はきっと効果を発揮してくれます。

もちろん、これから紹介していく「三戸式手指ケア」もしかりです。イラストも交えてわかりやすく解説しているので、みなさんが抱えている症状に応じて、適宜取り組んでいきましょう。