(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
物価高や人件費高騰により、全国の国立大学病院の約7割が赤字と、多くの病院で厳しい状況が続く現代。そのなかで、鳥取県米子市にある鳥取大学医学部附属病院は、黒字を維持しています。全国で最も人口の少ない鳥取県の大学病院は、なぜ黒字経営を実現させたのでしょうか。今回は、病院改革の現場に立ち会ったフリーTVプロデューサー・結城豊弘さんの著書『病院がなくなる』より一部を抜粋し、「鳥大病院」改革の苦闘の日々をお届けします。

鳥大病院のロボット手術

2006年、鳥大病院よりも早くロボット手術を導入した私立の東京医科大学病院では、アメリカに医師を派遣し研修を重ねた。ロボット手術の機器代を含めて全て研究開発費は病院の持ち出しだった。

2010年1月23日付の『週刊東洋経済』によれば、この当時、日本国内でダビンチを使って手術を行っている病院として、東京医科大学病院、金沢大学附属病院、国立循環器病センター、藤田保健衛生大学病院、九州大学附属病院の5つをあげている。これらの病院では泌尿器科や婦人科など一部の医師たちが最新治療器として手術や研究を推進したが、全科あげての取り組みとするまでには至らなく、先進的な数人の医師の興味しか惹きつけていなかった。

ここに、鳥大病院が他病院と異なる視点があった。かたや鳥大病院はロボット手術の教育システムを病院内に構築し、新しい技術の開発を目指したこと。そして最大の効果として「診療科の壁を無くす」という病院の組織改革に対して、導入されたロボット手術は大きな意味を持ったのだった。

鳥大病院の低侵襲外科センターを中心に鳥大病院は、ロボット手術の経験を積んでいく。また診療科の壁がロボット手術によって無くなっていった事で、複数の科が協力し共同開発の話が出始めた。

違う視点は新しいアイディアを生み出す。技術進歩や治療法に対して前進をもたらす。思わぬ効果があちこちで現れた。病院が風通しの良い病院に変化していく。やろうとしても出来なかった組織改革がどんどん進んだ。

安全な先進医療のために泌尿器科、女性診療科、消化器外科、頭頸部外科、心臓血管外科、胸部外科がタッグを組み、医師に看護師、麻酔科、臨床工学技士、病院経営事務が加わり、ロボット手術の下支えが行われた。さらに地域の公立病院はもちろんのこと、開業医や看護師も受け入れて鳥大病院では、オープンホスピタルという勉強会も行った。地域の医療のレベルアップや大学病院とかかりつけ医、患者がつながることでロボット手術に対する理解や支援の絆も形成した。「ロボット手術とは、どんな手術・医療なのか、知ることが何より大切」と原田省(たすく)さんは語った。