叔父がきっぱりと言い切った。すると、憲一が口を開いた。

「霧さん。歳を取ってからの再婚が悪いわけやない。でも、わざわざ結婚せんでもええんやないか? 事実婚でもええやろ?」

「……籍を入れたいんです。夫婦になりたいんです」

「そこまで言うなら、もうどうしようもないな」

 叔父と憲一がそろって大きなため息をついた。

 

        *

 

「記録4」には私の知らなかったことが書かれていた。

 霧が叔父家族に反対されていたことをはじめて知った。私に気を遣わせないよう、霧は黙っていたのだろう。

 隠し事をしていたのは霧だけではない。私も父や麻子とのやり取りを詳しく霧には話さなかった。霧に気を遣わせたくなかったのもあるし、暴言を吐く父を恥ずかしいと思ったからだ。父は私と麻子を身内の恥と感じ、私は父を同じように恥と感じた。きっとどちらも正しくて、どちらも間違っていたのだろう。

【関連記事】
遠田潤子の小説連載「ひとりゆらめく」第1回
遠田潤子の小説連載「ひとりゆらめく」第24回
遠田潤子の小説連載「ひとりゆらめく」第23回