漢語がやってくる以前から

いずれにしても、漢語が中国から大量にやってくるはるか以前から、日本人たちは独自の言葉を話していたのである。

ただし、それは話し言葉(音声言語)だけであり、文字として書き表されることはなかった(「神代文字」という日本固有の文字があったという説もあるが、現在では否定されている)。

『漢字と音読みの謎を解く-呉音・漢音・唐音の奥深い世界』(著:中澤信幸/中央公論新社)

そもそも言語というのは音声によって成り立っているのであり、文字は音声の土台の上に成り立った二次的なものである。音声言語は地球上のすべての民族がそれぞれ持っているのに対して、文字は一部の文明社会でのみ発達したものであった。

世界で音声言語が7000以上ある中で、文字の種類はわずかに300しかない(それも現在は滅んでしまったものも含む)。日本に固有の文字がなかったとしても、何ら不思議なことではないのである。