正解はなにか
なんとか福祉に繋がってほしいと、都の生活困窮者相談窓口と民間のNPO団体の電話番号をスマホで調べ、紙に書いて渡そうとしたが紙がない。背に腹は代えられぬと、レシートの裏側に書いて渡す。レシートにはワンピースとアクセサリーで8000円と印字されていた。彼女を傷つけないだろうか。渡してすぐ、電話する手段が彼女にはないことに気づく。なにもかも、うまくいかない。
役に立つかもしれないと、ホームレスシェルターに住んでいた友人の入居までの経験談を伝えると、「本当に困ったときはそうしますね」と彼女は言った。やさしさだ。いまが、まさにその「本当に困った状況」だというのに。
ほかに足りないものはないかと尋ねても「ない」と言う。私を警戒しているのかもしれない。もしくは、本当に「足りないものはない」のだろう。彼女にとっては。
助けの手を差し伸べるのは、本当に難しい。どうするか決めるのは、あくまで本人だからだ。周囲が矯正したり強制したりなど、絶対にしてはならない。
15分ほどは話していただろうか。私がいる限り彼女のプラスチック容器にお金が投じられることはないので、その場を去ることにした。「元気があるうちに、支援センターに電話してみてください」と一言添えて。
アイスカフェラテとクロワッサンが入った袋に手が付けられることは、最後までなかった。あれから1ヵ月経つが、なにが正解だったのかいまだにわからない。
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きのうまでの「普通」を急にアップデートするのは難しいし、ポンコツなわれわれはどうしたって失敗もする。変わらぬ偏見にゲンナリすることも、無力感にさいなまれる夜もあるけれど、「まあ、いいか」と思える強さも身についた。明日の私に勇気をくれる、ごほうびエッセイ。






