食欲の秋。季節を感じながら食べる食材が、私たちの食卓から消え始めているという事実をご存知でしょうか。「日々の食卓に並ぶ魚介類が日本近海で激減している。原因は二酸化炭素増加による水温上昇や海洋酸性化に加えて、違法、無規制に行われる乱獲・密漁だ」と語るのは福井県立大学名誉教授であり、水産学博士の矢野勲先生です。そこで今回は矢野先生の著書『日本の海から魚が消える-温暖化、IUUの問題から陸上養殖の挑戦まで』より一部を抜粋し、お届けします。
サンマはなぜ不漁になったのか
サンマについて見ていこう。
サンマの漁獲量は1958年の57万5087トンから2023年には2万5753トンに激減し(下図)、23年の卸売価格は、13年の5倍ほどに上がっている。私たちが食べているサンマは日本周辺から北米沿岸までの北太平洋に生息しているが、分布密度は日本近海が最も高い。日本の主要な漁場は、東北・北海道沖であり、体長20~35cmのサンマが来遊する(下図)。しかし現在、日本近海で獲れるこのサンマが小型化している。
図 サンマ漁獲量の推移(農林水産省海面漁業生産統計調査より)<『日本の海から魚が消える-温暖化、IUUの問題から陸上養殖の挑戦まで』より>
東北・北海道沖の海域は、サンマ親魚が回遊し成長する主要な索餌場であると同時に主要な漁場でもある。この海域には冷たい海流の親潮が流れている。親潮は硝酸塩やリン酸塩、珪酸塩、鉄分などの栄養塩に富むので植物プランクトンが繁茂し、サンマの餌となる動物プランクトンが育つのに適している。
ところが今、黒潮の勢力が増している。黒潮は亜熱帯に位置するフィリピン沖で形成され、そこから温帯の九州、四国、本州の太平洋側に沿って流れる栄養塩の少ない海流だ。これによって、親潮の勢力が弱くなっている。そのため、東北・北海道沖の漁場では、親潮から引き離された冷水渦と、暖かい黒潮から引き離された暖水渦が流れ込む混合海域が広域に発生している。