サンマが優先するのは…
加えて、この海域に水温の上昇が同時に起きたため、海洋の成層化現象が進行し、海底の栄養塩を海面に運ぶ上昇流が弱くなった。その結果、さらに植物プランクトンが減少し、これを摂餌する動物プランクトンも減少した。このことが、サンマの成長を低下させ小型化させたと思われる。
ところでなぜ、サンマは餌の動物プランクトンが不足する東北・北海道沖の海域をあえて回遊するのだろうか。
実はサンマなどの魚は変温動物であり、代謝に適した体温に自分自身で調節することができない。サンマの体温は、生息する海域の水温とほぼ同じになる。そのため、体温を維持するべく水温10~15℃の東北・北海道沖の海域を回遊しているのである。
したがって、たとえ餌の動物プランクトンが不足していても、至適な水温の海域への回遊を何より優先しなければならない。
※本稿は、『日本の海から魚が消える-温暖化、IUUの問題から陸上養殖の挑戦まで』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。
『日本の海から魚が消える-温暖化、IUUの問題から陸上養殖の挑戦まで』(著:矢野勲/中央公論新社)
多様な生物で溢れていた日本の海が直面する危機に対して、どのような解決策があるのか。
環境改善につながるクジラの保護や世界各国の資源回復の取り組み、さらには著者自身が試みる陸上養殖などから様々な可能性を示す。




