トップダウンは効率的

単に外界を知覚する場合だけではなく、思考や意思決定などをおこなう場合にもトップダウン的判断はなされる。知覚のように構えや期待だけではなく、経験や知識によって私たちの思考はトップダウン的になされる。

将棋のプロ棋士の羽生善治さんは、ある局面で「この手しかない」とひらめくそうである。その直感は羅針盤のようなものだという。その羅針盤に沿って海図を検証し、最終的に最善のルートを決断する。羅針盤があると効率的な航海が可能である。

このプロセスは実は素人でも同じである。何か手を思いつき、それがいい手かどうかその先の手を読んでみる。ただし、プロと決定的に違うのは経験や知識である。素人の思いついた手は意味のない手であったり、その先の手の読み方も上手ではなかったりする。

重要なのは、知識や経験の有無にかかわらずトップダウン的に判断しようとするプロセスは人間ならば同じだということだ。トップダウンは細かい吟味をしないで判断をするため、効率的だからである。プロ棋士はそれで正しい手を導けるが、場合によってはプロといえども素人のように間違うこともある。

現実には、十分な情報がない場合や将棋のように時間が限られている場合などがあり、トップダウン的な判断になってしまい、十分なリソースがないことによるリソース不足エラーを起こしてしまう。

※本稿は、『ミスによる事故をどう防ぐか-4種のヒューマンエラーと組織の安全文化』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。

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『ミスによる事故をどう防ぐか-4種のヒューマンエラーと組織の安全文化』(著:松尾太加志/中央公論新社)

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