「SNSが無法地帯であり続ければ、自分の大事な人がいつ被害者になってもおかしくない。絶対に、誰にも花と同じ目にあってほしくありません。」(木村さん)

パパからもらったボロボロの手紙を

中村 こうしてうかがっていると響子さんと花さんはすごく似ていると思いますし、他人にうかがいしれない強い絆があるように感じます。

木村 そういえばお葬式の前に不思議な体験をしました。花をエンバーミングしてもらって、同じ部屋に寝ていた時、花が夢に出てきたんです。その日は深夜0時に眠くて仕方なくなり、寝てしまった。時間にしたら20分くらい。

夢の中で花は、里村(明衣子)さんと試合をしていて私がセコンド。そしたら花が試合途中で心が折れちゃって、泣きながら「もう駄目」となった。私はマットをバンバン叩きながら「花、大丈夫だ! 諦めるな! 向かっていけ!」って。試合が終わり私がバーッとリングに上がると、花は大泣き。「花、もう大丈夫だから。よくがんばった、よくがんばった」ってギュッと抱きしめたら、とても体が熱かった。

すると花が「ごめんね、ありがとう、ありがとう。でももう行かなきゃいけないの」って言って、そこで夢が終わったんです。けれど花を抱きしめた感触はたしかにあって、花のぬくもりが私の体にしっかりと残っていました。

中村 そこに花さんがいるような現実感があったんですね。

木村 たしかにありました。花についてはさらに不思議なことがあって。花の喉仏は、火葬後も完璧な形で残っていたんです。ほんとうに仏様が合掌している形をして。分骨時に、お坊さんたちがすごいことだと大騒ぎしていました。特別なケースに入れて、我が家の仏壇に収めています。

中村 ところで花さんは、ルーツでもあるインドネシアに行かれたことは?

木村 中学1年の時に連れて行って、パパにも会わせました。小さな村なので、花が来たと知った村中の人に「花ちゃん、花ちゃん!」って囲まれて(笑)。みんなから可愛がられて、花もずっと住んでいたみたいに馴染んでいました。

花が5歳ぐらいの時かな。お誕生日にパパが何を思ったか、花にローマ字で手紙を書いて、金のネックレスを送ってきた。この間、花の部屋を整理していたら、その手紙が出てきて。もうボロボロなんですけど、海の向こうにも家族がいることは、彼女にとって小さいことじゃなかったんですよね。花のパパとパパの弟は、通夜と葬式、四十九日にも参列してくれました。

中村 最後にお別れができたんですね。

木村 花が亡くなったことはインドネシアでもニュースになったようで、花のパパから突然Facebookで友達申請が来て、連絡がつきました。その時、彼のFacebook上の写真を見たら、花そっくりなちっちゃい女の子がいたんです。彼に「もしかして、これ花の妹?」と聞いたら、うん、って。花にそっくりな妹が、インドネシアにいたんですよ。花に会わせてあげたかったなあ。妹がほしいと、ずーっと言っていたから……。落ち着いたら、花も大好きだったインドネシアまで、母や姉など家族みんなで会いに行こうと話しています。

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