イギリスに行ったら僕は当然無職なわけで、そんな自分が必要とされるのか不安もありました。でも実際に行ってみると、仕事をしていない僕でも、「おまえは楽しい奴だ」「おまえと一緒にいたい」と受け入れてくれて、付き合ってくれる。仕事をしていない自分が気にならなくなりました。

思えば、そういう友だちは日本にもいたんですよ。実際、留学する時に地元の友だちからは、「別に仕事がなくなってもいいんじゃない。うちの会社で雇ってもらえば」なんて言ってくれて。テレビに出ていようが、どこで働いていようが、どっちも僕であることには変わりないんだ、と。

今はその言葉を信じることができます。だから帰国した今は気持ちが楽になりましたし、以前より強くなれましたね。仕事に対しても、「自分がやりたいことをやる」という意志が芽生えてきたかなと思っています。

仕事の合間を縫ってひそかに準備

そもそも僕が留学を考え始めたのは、5年前、30歳になる頃に主演した『スコット&ゼルダ』という素敵なミュージカルがきっかけなんです。その時にたくさんのいい出会いに恵まれ、共演者の方々の人柄や立ち居振る舞いからいろいろなことを学びました。

多くの方々にサポートされるなかで、自分は主演として真ん中に立たせてもらって……。その経験で、もっと役者としての自覚を持たなきゃいけない、もっと自分に実力をつけてこの方々に恩返しをしたいと思ったんです。

演劇を勉強するためにイギリスに留学したい。それまで自分に自信を持てなかった僕が、一度留学したいと考え始めたら、行きたい気持ちが止められなくなってしまって。周りからはもちろん、「戻ってきても同じように仕事ができるかわからないぞ」とさんざん言われました。でも、留学を決めた時には、「別に仕事がなくなってもいいや」という覚悟に変わっていましたね。