人間不信になり、日本から逃げ出して
50代半ばになった今、さまざまな経験をしたからこそ感じられる自由を味わっています。人と暮らすよさもわかっているし、ひとりでいることの孤独や大変さも理解したうえで、あえて《おひとりさま》でいるわけですから。
20代は24時間を自分のために使えましたが、30代は結婚して出産し、すっかり子ども中心の生活に。5年で離婚した後は、シングルマザーとしての時間が続きました。その後、40代で再婚。50代前半の16年には乳がんが見つかり、手術を受けました。
さらにその翌年の3月、週刊誌の報道をきっかけに大きな騒動に巻き込まれ――人間不信になり、苦しかったですね。人生最大の奈落に落ちていると感じましたし、どうやって一日を終わらせて明日を迎えたらいいのかわからない。そんな時期が続きました。
精神的に参ってしまい、病院で受けた診断は重度のうつ病。セカンドオピニオン、サードオピニオンで複数のお医者さまのご意見を伺い、薬も山ほど処方されて……。でも、医療だけでは這い上がれない。つらい記憶やそれまでの人間関係が色濃い場所から逃げなくてはダメだと思いました。
とにかく誰も私を知らない場所に行き、人の視線から逃れたかった。そこで、サンフランシスコで暮らしている日本人の女友達の家に居候することにしたのです。
不眠が続き食事もろくに取れない状態でしたが、規則正しい生活をするうちに、自分を立て直そうという意欲が湧いてきた。そのために語学学校に入り、たとえ夜眠れなかったとしても、毎日学校に通うことを自分に課しました。
あの時、「いつまででもうちにいていいよ」と言ってくれた友達には心から感謝しています。彼女は長年会社勤めをしていましたが、女性であるがゆえこれ以上昇進が望めないという現実に直面し、スパッと会社をやめてビジネススクールに入ろうと勉強している最中でした。同世代のおひとりさまの先輩でもある彼女のサポートは、本当に大きかったですね。