オセロゲームのような人生の面白さ

今、仕事も私生活も充実しています。私自身が何を見て、何を感じているかということが仕事に直結するので、相乗効果があるというか――。つらいことや苦しいことも、結果的に女優という仕事につながっている気がするんです。人間が持っている良さや愚かさを含めて、善悪のひとことでは片づけられない複雑さを表現するのが、役者ですから。

人の心はあっという間に壊れるんだという実感を得たのは、とても大きな経験でした。でも、たとえ壊れても必ず再生できるということも、身をもって知りました。

乳がんもうつ病も離婚も、ネガティブな出来事かもしれませんが、それを乗り越えて仕事をしている私を見ることで、もしかしたら励まされる人もいるかもしれません。一瞬でもそういう存在になれるのであれば、と思うのです。オセロゲームのように、ネガティブもすべてポジティブにひっくり返せるんですね。それが人生の面白さだと思います。

いつも思うのですが、人生はプラスマイナスゼロ。高い山に登ろうとすれば、当然、谷も深くなります。平坦に生きていくのか、あるいは時につらい思いをしてでも、高い山からの絶景を見たいと思うのか。結局私は、アップダウンが激しい人生を歩んでいることになります。それを受け入れ、楽しんだほうがいいなと思えるようになりました。

アメリカの大学に通っていた息子は在学中に結婚し、卒業して夫婦で日本にいます。今は一時的に私と一緒に暮らしていますが、おそらくまたアメリカに戻るでしょう。私にくっついてさまざまな経験をしてきた息子も、今やもう大人。私がたしなめられることもしょっちゅうです。

そうそう、息子からは、次にパートナーを見つけるとしたら、国籍、年齢、性別は問わないから誠実な人にしてくださいって言われています。(笑)

この先、新たなパートナーですか? 今はまったく考えていません。そういうことがあってもいいし、なくてもいい。息子も手を離れたし、24時間自分のものです。だったら、まずは自分のやりたいことを優先したい。再びこんな時間が戻ってくるとは思っていなかったし、自分が一番驚いていますが、こういう人生の展開になったからには、今を最大限生かさないともったいないでしょう。

私はこの年齢になっても、半分夢の中で生きているようなところがあって。「こうしたい」「こうなりたい」という気持ちのテンションは、幼い頃から変わりません。「わぁ、そうなったら最高!」と小躍りしちゃうくらい。今もひとつ、叶えたい大きな夢がありますが、それはまだ内緒です。(笑)

そのためにも、今、このおひとりさま時間を思い切り楽しみたいと思います。最後に、「私、なかなか楽しくて、いい人生だった」と思えるように。