病室で(撮影:村井理子)

すごく効くとS先生は言っていたけれど

がっくりと肩を落としてベッドに戻った。S先生から手渡された利尿剤を飲み、点滴のチューブが絡まないように気をつけながら、静かにそこに横たわり、窓から見える景色をじっと眺めていた。私は本当に馬鹿な人間だ。自分をないがしろにして、なりふり構わず行動することがかっこいいとでも思っていたのだろうか。恥ずかしい。なんて恥ずかしい人間なのだろう。

灰色の空に舞う雪の、わずかな音が聞こえてきそうなほど、部屋は静まりかえっていた。細やかな雪が空中で一瞬だけ止まり、そして淡い残像を描きながら、落下していくように見えた。精神的に、限界が近づいているのがわかった。もしかしたら私は、死んでしまうのだろうか。ふと考え、両手が小刻みに震えだし、息を飲んだ瞬間、突然、それはやってきた。何がやってきたかというと、利尿剤が効き始めたのだ。

確かに、すごく効くとS先生は言っていたけれど、それにしたってものすごく効くね。まいっちゃうよ。ガバッとベッドから起き上がり、急いでトイレに行った。わずか数ミリの大きさの青い錠剤だったはずだ。こんなチビなど恐るるに足らずと舐めてかかっていた私を嘲笑うかのように、この小さな青い薬は、抜群の効果を発揮しはじめた。悲劇の病人モードになっていた私も、カミソリのように鮮やかな切れ味で私をトイレに導くこの錠剤のおかげで、悲しんでいる暇もなくなったのである。そして、トイレに通えば通うほど、体は軽くなり、呼吸は楽になるように思えた。