人間の体というものは、本当に不思議だ。酒をしこたま飲んだ次の日は体がむくむなんてことを、私もかつては口にしたものだが、心臓を病んでいるときの体のむくみというものは、二日酔いの比ではない。かなり苦しい。

どれほど苦しいかというと、焼き肉をたっぷり食べたあとに、3枚重ねのパンケーキを詰め込むほどに苦しい。辛くて、苦しくて、息も絶え絶えになる。しかし、この抜群の効き目の利尿剤を飲んだ瞬間から、どんどん体は軽くなり、腹は凹み、呼吸がスムーズになり、心まで晴れやかになるのである。なぜ私だけがこんな目にと散々な気持ちでいた私だというのに、トイレに通えば通うほど、心に羽根が生えたように明るい気持ちになった。

その日の夜までには、「あなたのおかげで私は強くなれた」と、大部屋で悩まされたベテランに対して感謝の気持ちまで抱くほど、呼吸は楽になっていた。

次回● 「犯人はお前だったのか。朝、鏡に映る自分の顔が変わっていた話」

【この連載が本になります】
『更年期障害だと思ってたら重病だった話』
村井理子・著
中央公論新社
2021年9月9日発売

手術を終えて、無事退院した村井さんを待ち受けていた生活は……?
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