《同情してほしい病》はみじめっぽい
自分自身のことを振り返ってみると、この85年間、エレベーターみたいに上がったり下がったり、いろいろなことがありました。筆舌に尽くしがたいような出来事も、多々経験しています。
「美輪さんはさまざまな苦労もあったのに、なぜそれが様子に出ないのですか」と聞かれることがありますが、私は、「どうやって出せばいいのですか」と答えます。まあ私は、やせ我慢する性質なのでしょう。それを「美学」なんていうと、ちょっとかっこいいですけどね、そんな結構なものではありません。ただ、見栄っ張りなだけ。(笑)
世の中には、ことさら「私、かわいそうでしょう」と見せたがる《同情してほしい病》の人がけっこういます。でも、そういうものを売り物にするのは、みじめっぽい。やはり「こちとら、江戸っ子でい」と、東京っ子の潔い心意気を参考にしたいものです。
健康面でも、決して恵まれていたわけではありません。子どもの頃から、病気の百貨店のような状態。なにせ10歳で被爆していますから、その影響もあるのでしょう。実にさまざまな病気を潜り抜けてきました。
2009年には公演中のアクシデントで右手首を粉砕骨折しましたし、19年秋には脳梗塞にもなりました。ところがどういうわけか、すぐに快復してしまいます。粉砕骨折の時は、医師に一生腕は使えないだろうと言われたのに、4ヵ月で元に戻りました。そういう奇跡が起こる体質なのでしょうか。
ですから何が起きても、「またか」という感じで、そんなに深刻にはなりません。病気になってもとくに落ち込むこともなく、「すぐに治るに違いない」と前向きに考えますし、困難に遭遇しても「今にみておれ」(笑)。そう思っていると、脳も身体の細胞もポジティブに働いてくれる気がします。