待ってくれている人が必ずいると伝えたい

先に紹介した遠藤綾子さんも、最近になってこの語り部活動に参加し始めた。3人の子どもを亡くしたつらい記憶を語る、その理由を改めて尋ねる。

「一番には、私たちみたいな思いを絶対にしてほしくない。自分の子どもみたいになる子たちが減ってほしいという思いから」

そしてもうひとつ、彼女には伝えたいことがあるのだという。

「悲劇に見舞われた時、自分は真っ暗闇にひとりでいると思っていた。でも、本当はそっと灯をともして待っていてくれた人たちが、たくさんいたんです。こっちに来い!という人の声は届かなかったけど、これならできるよ、ここにいるからね、と見守っていてくれる人たちに本当に助けられた。その一人ひとりに感謝したいのと同時に、今、何かで悲しんでいる人がいたら、必ずあなたを待っている人がいるよと伝えたいです」

誹謗中傷に噂話と、嫌なものを見聞きすることはたしかに多い。しかし、石巻ではその何倍も、宝のような人の姿と言葉に出会う。幼い頃に傷を負った子らも成長し、自らの言葉を紡ぎ始めた。まだ10年。東北の物語は、これからだと感じている。