「たとえどんなにこんがらがってしまっても、共有している幸せな記憶、そしてきっかけさえあれば解きほぐせるのではないでしょうか。」
現在発売中の『婦人公論』5月25日号の表紙は女優の高畑淳子さんです。出演する映画を通じ、こじれた家族関係を修復することも終活のひとつなのだなと痛感したと話す高畑淳子さん。自身の終活は――。発売中の『婦人公論』からインタビューを掲載します。(構成=丸山あかね)

ノーメイクで台所に立ち続ける毎日

今回の写真撮影の秘めたるテーマは「草笛光子さんになりきる」でした。さてさて女優の顔になっていたでしょうか?(笑)

なにしろ新型コロナウイルスによる自粛生活中は、ノーメイクで台所に立ち続ける毎日でしたから……。ただしその間も、日常生活の小さな感動を覚えておこうと心に決めていました。そうやって感情の引き出しを増やすことは、芝居をするためには大切だという気がするのです。

もうすぐ公開される映画『お終活』で、定年を迎えた亭主関白な夫にストレスを募らせている主婦・大原千賀子役を演じています。千賀子が手料理を家族の食卓に並べるシーンがあるのですが、試写を観て思わず嬉しくなりました。リアルだわ、いつもの私のまんまじゃない! って。

それにしても、橋爪功さん演じるところの夫が本当に可愛くないのです。あれは役作りの一環だったと思いたいけれど、休憩時間も私に「あっちへ行ってろ」みたいなことをおっしゃるので、「なによ、むかつく〜」と、千賀子の心境そのものに。(笑)