「ヨタヨタヘロヘロ」を自認する虚弱期に入りました

私は、同志たちとともに1983年に、「高齢社会をよくする女性の会」を結成。当時50代だった私は高齢者や介護の現場の方の声に耳を傾け、介護保険を実現するなど活動してきました。そうこうしているうちに私自身、前期高齢者を経て、正真正銘の後期高齢者に。「老い」の当事者になってみれば新たな発見もあり、「これは困った!」「これはありがたい!」「こういうことだったのか!」と、日々驚いています。

誰もが別に好き好んで老いてきたのではありませんし、毎日のように初めての経験が待っているので不安だらけ。だからこそ、「老いという未知の世界」へ冒険に乗り出すのだと考えて前向きに取り組みたい。私も少しずつ体力がなくなってきて、「ヨタヨタヘロヘロ」を自認する虚弱期に入りましたが、この先も好奇心と勇気とユーモアをもって楽しく歩んでいきたいと思っています。

そして初代だからこそ経験する怖れ、寂しさ、孤独に対してもしっかり向き合い、ときには逃げるばかりではなく涙を流したっていいではないか――。ただ、初の経験者として一定の申し送りをすることは、後の世代が老いに崩されないための一種のワクチンになるのではないか――。ファーストペンギンとして、いまこそ伝えておくべきことがあると思うのです。

若い方のなかには「日本の制度は高齢者に厚く、若者にやさしくない」と考える人もいるようです。でも、人は必ず老います。老いも若きも知恵を出し合って、この冒険を成功させるしかないのです。

私の本『老いの福袋』には、老いの時期を楽しく快適にするアイデアもあれば、ちょっぴり怖い現実も出てきます。超高齢社会の課題を乗り越える知恵も紹介しています。

高齢者だけではなく、老いた親を持つ子ども世代にとって役に立つ話題も取り上げています。いわば「老い」に対する免疫をつけるサプリメントのような本ですから、ここで「老いの不安」をちょっと先取りしておけば、「ころばぬ先の杖(知恵)」となり、不安解消の一助になるでしょう。

天寿をまっとうするまでの時間が2倍になったからには、そのぶん、幸福な時間も2倍に増えてほしいものです。私の見聞きしてきたこと、そして老いの日々の体験が、多少なりともそのお役に立てたら、これほどうれしいことはありません。

※本稿は樋口恵子『老いの福袋-あっぱれ!ころばぬ先の知恵88』(中央公論新社)の一部を再編集したものです。