母と闘うと地獄を見る

青木 私が出産した時も、元夫は母に対する嫌悪感を隠さない私の言動を見て嫌だったと思います。彼は温かい家庭で育った人なので、人生の中でもっとも幸せな出産という場面に、せっかくお母さんがお祝いに来てくれたのに、とか、関係修復のチャンスなのに一歩も譲れない君のほうがどうかしてる、と思ったのでしょう。

村山 理解できないのは仕方がないとしても、せめて自分にはわからないこととして、そっとしておいてくれたらよかったのに。

青木 彼も彼なりに頑張ろうとしてくれたと思っています。でも、一番ショックだったのは、何をもってしても孤独を埋めることはできないのだという事実でした。男の人に埋めてほしいと望んでいたけれど、見当違いだったわけで。

村山 お子さんではどうでした?

青木 うーん、確かに娘の存在は私の人生を豊かにしてくれましたが、娘のことを愛おしいと思う気持ちと、孤独は別物でしたね。

村山 そうかぁ。でもそうかもしれない。孤独は自分の心の問題ですものね。母に対する反抗心は、「いつか自分の愚かさに気づいて猛省してくれるはずだ」という期待の裏返しだと分析するのですが、その日は永遠に来ない。なぜなら、足を踏んだほうは何も覚えていないのと同じで、相手に娘を苦しめたという自覚がないので。

少なくとも私の母は、自分の子育ては完全無欠の大成功だ、くらいに考えていたと思います。ここに私は孤独感を抱いていたわけですが、母を変えるのは無理。闘おうなどと思えば、もれなく地獄を見ます。

青木 私が憶えている事実と母の事実はまったく違いました。だから、闘うこともできなかったように思います。

〈後編につづく

青木さやかさんの公式HP
https://z0z0.jp/sayakaaoki/ 

10月20日から白井晃 演出の「Home I'm Darling ~愛しのマイホーム~」(シアタークリエなど)に出演する。