2021年10月1日、東京都の名誉都民に選ばれたピアニストの室井摩耶子さん。音楽家として今も現役で活躍する室井さんだが、100歳にして毎日数時間ピアノを弾いているという。そのスタミナはどこから湧くのか? ご自宅でお話を伺った(構成=山田真理 撮影=本社写真部)
「年齢を先取りせず今を楽しむ」は母の教え
今年(2021年)4月、100歳を迎える記念のコンサートを開いてもらいました。でも私にしてみれば、「あら100歳って誰のこと?」って感覚なんですよ(笑)。周りが言うから、そうか私は100歳になったのかと思うけれども、普段はほとんど年齢というものを意識していないのです。
それは母の影響が大きいかもしれませんね。1921(大正10)年に生まれた私は、6歳の時に父が買ってくれたピアノを弾き始めました。私が10歳で本格的なレッスンを始めるにあたって母は、ドイツ留学から戻って東京音楽学校(現・東京藝術大学)の教授をしていた高折宮次先生に指導いただけるよう頼んでくれました。当時の女の子の習い事としては破格のことでしたが、「子どもだからまだ早い」といった感覚が、母にはなかったのだと思います。
一方で、母からよく言われたのが「急いで“おませ”になる必要はないのよ」ということ。どうせ年は取るのだから、年齢を先取りするよりも、今を楽しみなさいということだったのでしょうね。