『ぼくのお父さん』(矢部太郎・著/新潮社)より

別の「しあわせ」を見つけることができた

かつて両親に「芸人になりたい」と伝えたときは、反対されることもなく、「好きなことをやりなさい」という姿勢でありがたかったです。

芸人と漫画家は両方続けていきたいですね。芸人のネタと違い、漫画は、個人的なことをつづることで読んだ方に共感していただける。『ぼくのお父さん』を描いて最終的に気づいたのは、大人は誰も、はじめは子どもだった、という普遍的なメッセージ。これはサン=テグジュペリの『星の王子さま』の序文に出てくる言葉です。

誰にでも子どものときがあり、大人になってもそれは続いているんです。決して別の人間になるわけではない。当たり前のことなのに、多くの人は「子どもだった」ことを忘れてしまう。僭越ながら、この本が、みなさんが子どもだった頃を思い出すきっかけになったら嬉しいなと思います。

父は今79歳。歳はとったものの、まったく昔と変わっていません。実はこの間、父の紙芝居作品を手伝ったんです。ちょっと父が体調を崩しまして、下描きはできていたけれど、仕上げを誰かに頼まないと締め切りに間に合わないという事態になって、じゃあ僕が引き継ぎましょう、と。(笑)