ひばりさんのお葬式で読んだ弔辞

友達が少ない私にとって、唯一の「親友」は美空ひばりさんだった。

前にも書いたが、私たちが知り合ったのはお互い十代の頃、最初の彼女の印象は「大人ぶった気味の悪いやつ」だったが、成人してから仕事で再会して意気投合。ぐっと距離が縮まったのは彼女が小林旭さんと離婚してからだ。

ある日、彼女のお母さんが私のところにやってきて、「あなたは芸能界で仕事を続けながら、結婚して子どもを産んで家庭生活もうまくやっている。どうか今後のひばりのために普通の家の様子を見せてやってほしい」と頼まれたのだ。

それからしばらくして、ひばりさんがいきなり我が家にやってきた。

家に来たことだけでも驚きだったのに、いきなり「今日、泊めて」などと言い出した。その頃はまだ借家生活で、客用の部屋などなかった。するとひばりさんは

「三人で寝ればいいじゃない」と、なんと夫と私と三人でベッドの上で川の字になって寝ることになった。しかも彼女は「美空ひばりはいつでもセンターなの」と、真ん中を陣取ってしまった。

かわいそうな夫は隣に天下の美空ひばりが寝ている緊張から、その晩は一睡もできなかったそうだ。

それからというもの、彼女はちょくちょく家に遊びに来るようになった。一緒に花街で遊ぶようになり、娘のハヅキがひばりさんに日本舞踊を習うようになりと、付き合いは深まっていった。

もしも彼女が生きていたら、今でも付き合いは続いていただろう。しかし残念ながら、彼女は32年も前に亡くなってしまった。

ひばりさんのお葬式、私はこんな弔辞を読んだ。

「私はもう、友達は持たないでしょう。あなたが最高だったから」

その言葉どおり、ひばりさんに代わるような友達は他にはいない。今、親しくしているのは黒柳徹子さんくらいだが、二人の友情の間には程よい距離感が保たれていると思う。