点数で振り分ける世界ではない

そんな日々に思うのは、「自分が真剣なら、誰かがそれを見て手を差し伸べてくれる」という事。人生を切り開いてくれるのは有り余る富や権力でなく、人の真心だ。勿論、医師である主人のある程度の経済的後ろだてがあってのことだが、お金があるからと言って芸術の道が開かれるという保証はまったくない。

さて、「サロン・ドトーヌ」の展覧会場に行って感じたのは、「なんと多くの輝く才能がいるのだろう」という事。この中でどう抜きんでるかなどと考え出したら、具合が悪くなってしまうし、考える必要もないと思った。

芸術の素晴らしい処は、いろんな価値を物差しに使っていい点だ。誰が1番で誰が2番。などと点数で振り分ける世界ではない。人と比べることに何の意味もないのだから、「自分にしかできない表現」を探して歩んでいけばいいだけだ。でも、それはいかばかり厳しい道だろう。その時間が厳しく、孤独だから、アーティスト同士は寄り添おうとするのかもしれない。

会場で嬉しかったのは、多くの作家たちが次々と声をかけてくれたことだ。

展覧会会場で。一番右は写真家のアントワーヌ・プぺルさん